「…蓮くん」

「んふふ、なに?」

「先生、って、呼んでもいい?」

また強くギューッと抱きつけば、蓮くんはいつもみたいに笑った。

分かってるみたい。

あたしが今何を考えてて、それが一時的なちょっとした不安だってことも。

「いいよ、今日だけね」

少しだけ、いいよね。


「…先生、好き」

あの頃はこう呼んでた。

蓮くんと呼ぶようになったのは、あたしが大学を卒業してからだ。

「懐かしいね」

そう言った蓮くんの声も何だか少し嬉しそうに聞こえた。


「せんせ」

「んー?」

「楽しかったね、今日」

「そうだね、楽しかった」

あたしあの時も蓮くんのこと大好きだったけど、今はもっともっと、言葉で表せないくらい想ってるよ。