加地くんは少し黙った後、あたしに顔を近づけて小さな声で言った。

「何で吉野先生がいんの?」

加地くんは吉野先生が中村さんのことを好きってことを知らない。

久しぶりに会ったし、伝えるタイミングもなかった。だから吉野先生がここにいる理由が分からないんだろう。

それと、あたしたちが吉野先生を呼ぶことを許可した理由も。


加地くんと同じように小さな声で喋る。

「吉野先生、中村さんのことが好きなんだって。中村さんは何とも思ってないらしいんだけど」

「まじで?」

「うん、でも今日誘ったの中村さんらしいんだよね。何考えてんのかよく分かんないけど、あたしたちも邪魔するつもりはないし」

前に吉野先生とは色々あったけど、ちゃんと謝ってくれたし、何より中村さんが自分から誘うなんて興味深々で。

シロを筆頭に何があったか問い詰めたけど、中村さんは特に意味はない。なんて言って話を強引に終わらせた。


「まぁ別に、もともと悪い人じゃないみたいだし。本人が誘ったんなら問題ねぇけどな」