大学を卒業して働くようになって、学生の頃とは違って蓮くんと会える時間は随分減った。

それでも蓮くんは、仕事終わりに会いに来てくれたり、2人共休みの日はいろんなところに連れて行ってくれる。

…だけど、最近はそれすらも出来ないくらいに忙しくて、電話で声を聞くのが精一杯だった。

そんな日々が続く中で、ちょうどあたしも蓮くんも早く仕事が終わる日があって。

それがたまたまバレンタインデーだったから、嬉しかったんだ。

直接チョコ渡せるな、なんて少し浮き足立って。だったら頑張って作って食べてもらおう、なんて思って。


…それなのに

「…あれ、いない…」

蓮くんの家に行っても、明かりがついてないどころか、鍵もあいてなかった。

大学を卒業して渡された合鍵を使って中に入るけど、案の定蓮くんはいない。