通称、マツキャン。マツケン、じゃないよ。かっこわらい。…えー、そこのひとり息子、蒼大。通称・蒼ちゃんは、うら若き現役高校生。


「蒼ちゃん、白ひとつください」


白、というのは、アイスキャンディの種類。味は、薄いヨーグルト、みたいな感じがする。
ほかに、赤と黒がある。
赤はイチゴ、黒はチョコ。どれも、風味がそれに似ている気がするだけで、赤は赤だし、黒は黒。
決して、昔から誰も、――イチゴをください――なんて言わない。


「…60円。」


クーラーボックスの中から取り出された、棒状の冷たい塊と引き換えに、蒼ちゃんに硬貨を2枚手渡す。
すぐに半透明の袋から出して、わたしはぺろりと舌先を付けた。「旨。夏はやっぱりこれだぁね」


口の中に爽やかに広がる、白の味。


一方の蒼ちゃんは、慣れた手つきでクーラーボックスから赤を取り出した。
わたしはそれを横目で見て、甘酸っぱいイチゴ風味を想像する。