「あ、私の名前はリリ、好きなように呼んで!」

「じゃ、じゃあリリさん…」

「ノンノンノン!もっとフレンドリーな呼び方をしてよ!」

「り、リリ…?」

「はい!貴方は…っと…まだ名前をもらってないのね」

いたずらっ子の様な笑顔をし僕に向けられて、意味深なさっきの言葉を心の中で反芻する

名前…?もらう?
僕の…僕の名前を…?

「り、リリも…」

「ん?」

「リリも、名前を貰ったの?」

「…そーだよ、外から来た人はこの壁の向こうの王子様に名前を貰うの」

いつの間にか目的地についていたらしく、真っ白な壁を手で触りながら教えてくれる

「外から来た人…ってとこは、ここで生まれる人もいるの?」

「うん、大半はここで生まれた人、外からくる人の方が少ないの」

「そうなんだ…」

「んー、たくさん歩いたから疲れた…切り株り座って休もっか」

「うん」

2人で半分こして座った切り株は狭くて、たまにずり落ちたり、その度に2人で顔を見合わせて笑っていた

キョロキョロとあたりを見回す
周りにあるのは今まで進んだ森の道と、ありえない程高い真っ白な壁、雲一つない空、痛い程に降り注ぐ太陽
ぽかぽかとした陽気に思わずあくびが零れる

と、その瞬間

壁だったはずの場所から扉がいきなり現れる

ゴゴゴゴゴ、というそれっぽい音を立てて扉が開くと、リリがふっと微笑む

「よしっ、リリがこれるのはここまで、また、お話しようね、ばいばい!」

すくりと立ち上がり森の中に消えていく

彼女の鈴の音が耳の奥に響いて思わず口元が緩む