涼しい風が頬を撫でる。




ずっと触れたかった温もりに包まれている気がする。




「…ん、」




ゆっくりと目を開けると最初に視界に入ったのは、微笑んでこっちを見てる彼だった。




「…理人?」


「あ、ごめん。起こしちゃった?」




理人の言葉に自分が横になっていることに気付く。
私、いつの間にか寝てたの?




お母さんから『理人くんが目を覚ました』って聞いて病院に飛んできて、たくさん泣いて…そこからの記憶がない。




泣きすぎて寝ちゃったんだ…
重い体を起こすと、私が寝ていたのはソファーだった。




「あれ、この部屋にソファーあったっけ?」




ソファーを何度か撫で、疑問を口にすると、理人が苦笑いして教えてくれた。




「あれから芽々寝ちゃって、母さんが『アタシより先に寝る奴は置いていくよ』って言って、父さんが他の病室から借りたソファーに芽々をお姫様抱っこして寝かせてくれたんだ」




お義母さんの言い方がちょっと刺々しいけど、私と理人を二人にしてくれたんだと思うと嬉しかった。




お義父さんにお姫様抱っこされたのは、かなり恥ずかしいけど。




こうして当たり前のように話しているけど、本当に理人は目が覚めて私の目の前にいるんだとふと実感する。




『理人と日海と三人で幸せになれますように』
あの思い出の神社に願ったことが、こんなすぐに叶うとは思わなかったな。




理人は昨日よりも声が出せるようになってて、ずっとつけていた酸素マスクをもう外している。




もっと理人がここにいる、生きていることを実感したくて、私はソファーから立ち上がって理人のベッドに腰掛け、理人に軽く寄りかかった。




「急にどうしたの?前よりも甘えん坊になったの?芽々は」




確かに以前の私ならこんなことめったにしないけど、今はどうしてかな?こうしていたいと思う自分がいる。




それはきっと。




「…前よりも幸せって思うからかもね」




理人に微笑むと、理人もふっと微笑んだ。