「お前……俺のこと覚えてねーの?」
ちょっと……いや、かなり不満げな眼差しで桐生奏は私を見下ろす。
色素の薄い茶色い瞳と、くっきり二重のまぶた。
スーッと通った鼻筋がすごく綺麗で、薄っぺらい唇とのバランスが絶妙。
凄まじいほどの色気と存在感を放つ彼のことなんて、当然ながら知るはずがない。
これだけの美貌の持ち主だから、一度見たら絶対に忘れないはず。
だけど、私の記憶の中にはいない。
「ど、どこかで会ったっけ……?」
こんなチャラい人、今までの私の友達にはひとりもいなかった。
「マジで言ってんの?ありえねー」
「いや、大マジだけど……!誰かとカン違いしてるんじゃ」
「なわけねーだろ!」
そうですか。
でもね、本当に知らないんだよ。