「あなたの方が緊張してどうするの。さくら、気を付けてね」
家を出る間際まで、お父さんはそわそわして落ち着かない様子だった。
お母さんに笑われながら、私に手を振るお父さん。
きっと、私が連絡するまではずっとあんな調子なんだろうな。
そう考えると、クスッと笑みがこぼれた。
大学の同期数人と駅で待ち合わせ、電車に揺られながら会場へ向かう。
「緊張してんの?」
「えっ?」
同期の男子に声をかけられハッとする。
「手が震えてるから」
「あ、うん。実はちょっとだけね」
「そっか。さくらは大丈夫だろ。俺の方がやべーし」
「いやー、どうだろう」
みんな緊張した面持ちを浮かべている。
そりゃそうだろう。
きっと、緊張しない人なんていないと思う。



