「行かねー」



「じゃあ海行こう?」



「ムリ」



「じゃあ山は?」



「ありえねー」



「んもう!じゃあどこ行きたいの?」



「…………」



こんなやり取りは日常茶飯事。


漆原さんは、まったくひるむことなく奏に向かってニコニコ顔。


肩とか腕とか、隙さえあれば漆原さんは奏に触る。


その度に胸が苦しくなって、黒い気持ちが胸に広がった。



よく見ると2人はお似合いだし、どこからどう見ても美男美女のカップル。



はぁ。


トイレにでも行って気持ちを切り替えよう。



「どこ行くんだよ?」



立ち上がって教室を出ようとすると、奏に腕を掴まれた。