「お邪魔します」
律儀にもペコッと頭を下げて家に上がった奏は、私には見せたこともないようなキリッと引き締まった顔でスマートさを演出している。
私たちはお父さんにリビングに促され、ダイニングテーブルに着いた。
「晩ごはんは食べたのか?」
「あ、うん。食べて来たよ」
「そうか」
キッチンで慣れない手付きでお茶を淹れようとしているお父さんを見て立ち上がる。
「私がやるから、お父さんは座ってて」
「あ、ああ。悪いな」
「いいっていいって。ほら早く」
お父さんは救命救急センターで働いていて、1日に何人もの人の生死に関わる医療処置をしている。
疲労感やプレッシャーが半端ない現場にいるんだと前に教えてくれた。
だから、せめて家ではゆっくりしてて欲しい。



