「マコト、帰ろ」

「うん!」

結局、捨てられた仔犬の目には勝てず、お昼休み終わりに私がマコトに
声をかけ、別に喧嘩をしていた訳じゃないけど、仲直り?みたいな事で収まった。

しかし、気まずさは解消出来ずに、私達は無言のまま歩く。
その空気にいたたまれなくなったのか、マコトが「あのさ…」と口を開いた時、不意に、マコトのケータイが鳴った。

「あ、母さんからだ。えっと……「苺タルトが出来上がりました。美弥の所で先にお茶を飲んでます。ついでにお夕飯をご馳走になるので、着替えたらお隣に来てね♡」……だって」

「……そう」

真弓さんの苺タルト、食べたいけど、今は一人の時間が欲しかった。

「……ごめんね」

「なにが?」

「だって……」

マコトがシュンと肩を落とす。

多分、私が嫌そうにしていたのが顔に出ていたんだろう。
それを見て、謝ったんだと思う。

「……早く帰ろう。苺タルト、なくなっちゃう!」

「あっ…」

私はマコトの手を取り、走り出す。

「マコト、早くっ!」

「ま、待ってよ!」

繋いだ手がギュッと握られる。

その時、私は前を見ていて気が付かなかった。
マコトが頬を赤くしていた事を。