「なるほどね。だから朝、あんなにギクシャクしてたんだ?」

私は、もう一人の幼馴染み、久保可鈴と屋上でお弁当を食べていた。

「まったく、呆れちゃうよね!あんなからかい方さ!」

玉子焼きに箸を刺し、乱暴に口へ放り入れた。
いつも通り、美味しい。

朝からこの時間まで、ずっと考えていた。
マコトは、なんであんな事をしたのか。
ずーっとずーっと考えて、ある結論に至った。

『からかわれたに違いない』

と。

「え?それって、からかわれたの?」

可鈴が首を傾げて不思議そうな顔で私を見る。

「えっ、違うの!?」

私は身を乗り出し、可鈴に詰め寄った。

「いや、あたしに聞かれても分からないけど……」

可鈴が「近い近い」と私のおでこを押し返した。

「あ、そうだよね。ごめんごめん」

フーッと溜め息を吐いて座り直す。

「……分からないけど、からかったんじゃないと思うな」

「……なんでそう思うの?」

「んー……なんとなく?」

「なにそれ」

私はフッと笑った。

「まあ、いつも通りにしてあげなよ。マコト君、今日何度も美紅の事見てたよ?」

「え?そうだった?」

考え出したら段々腹が立って来て、朝から今までマコトとは目を合わせない様にしていたから、気が付かなかった。

「話し掛けるの躊躇してたんでしょうね。そりぁもう、捨てられた仔犬みたいな目でしたよ」

可鈴がふふふと笑う。

「それじゃ、私が悪者みたいじゃない……」

私は頬を膨らまし、ブーブー文句を言った。

「まあ、そう言いなさんな。あんた達がギクシャクしてたら、こっちまで調子狂っちゃうんだから」

可鈴が食べ終わったお弁当箱を片付けながら言った。
私も最後の一口を食べ、可鈴と同じ様にお弁当箱を袋にしまう。

「……考えとく」

可鈴が「しょうがないな」みたいな表情をした。

話し終わった所で予鈴のチャイムが鳴る。

「あ、戻ろっか」

「うん」

なんとなく納得が行かないままだったけど、しょうがない。

「真弓さんの苺タルト、食べたいし」

「え?何か言った?」

先に階段を降りていた可鈴が振り向く。

「なーんでもない!早く行こっ!」

「あ、ちょっと待ってよ!」


教室に帰ってマコトをチラリと見てみたら、可鈴の言った通り、捨てられた仔犬の目で私を見ていたから、私は笑ってしまった。