「「………」」
いつも龍牙と一緒にご飯を食べたり、お話したりと二人っきりの時間をこの桜の木の下で過ごしてる。
そこで私は
「はぁーーー…」
と深い溜め息をついたのでした。
「そんなに困る物なら断ったら良かったんじゃなかったのか?」
正論だ。
「そうなんだけど、あの古手川さんのキラキラした目で頼まれちゃったらどうも断るにも断れなくって…」
「まぁ、それはいいとして。どうするんだ?それ。」
「どうしよう…?」
私の手にはさっき古手川さんに渡された怪しげな薬がある。
本当にどうしよう。正直怖くて飲めない!
「………」
うーんうーん。どうしよう、困ったことになったよ・・・トホホ。
「…さゆみ、それちょっと貸して。」
「えっ?別にいいけどどうするの?もしかして代わりに飲んでくれるのっ!?」
まぁ、冗談だけど・・・えっ?
冗談で言ったつもりが、龍牙はその怪しげな薬を何の躊躇いも無く口に入れた。
「えっ!?りゅ、龍牙っ!?だ、だだだ大丈夫っ!?さっきは冗談で言ったつもりだったんだけど、まさか本当に飲むとは思ってな…んっ!?」
突然のキスに驚き、そして・・・ゴクッ。ゴクッ。ゴクッ。
龍牙はあの薬を口移しで私に飲ましてきた。
薬は少し甘くて正直美味しかった。
「ゴクッ……はぁ…」
「不味いかと思ったけど意外と美味かったな。」
「うん、そうだね…って違うでしょっ!!」
「?何がだ?」
「だ、だって急に……その……え、えーっと…」
カァァァァーーーー。
思い出すと顔が見なくても分かるくらい私の顔は真っ赤になった。
く、口移しなんて…恥ずかしくて言えないよぉぉぉ!!
「だってさ、さゆみ、あのままにしていたら絶対飲めない気がしたから。」
「そうかも知れないけど…」
「いいだろ?終わり良ければ全て良しって言うじゃん。」
「………」
「何?そんなに嫌だった?」
「い、嫌じゃないよっ!嫌というよりむしろ嬉しかったし、もっとして欲しかっ…た……っ!!??」
「…え?」
「ち、違う!嫌じゃなかったけど、断じてそんなことは思ってないから!たださっきはつい口が滑ったという……あぁぁぁぁーーーー!!!」
私はなんてことをっ!
「…へぇ、もっとして欲しかったんだ?」
「っ!?」
龍牙、なんか笑顔が怪しいんだけどぉーーー!?
「ち、違うの!さっきのは、さっき…のは……」
うぅーー…うまい言い訳が思いつかないよぉー。
「…さゆみ。」
「…な、何?」
「さっきの続き…する?」
「えっ!?」
「まぁ、薬はもう飲んじゃったから無しでやることになるけど♪」
それって・・・キス、だよね?
・・・・・え?え?えぇぇぇぇーーーーーー!?
「どうする?」
「あ、う…え、えーっと…」
「………」
龍牙、真剣だ。
それはもちろん龍牙と、キスはしたいけど・・・
「………」
でも、恥ずかしくて言えないよぉー。
「…クククッ…」
「っ!?」
龍牙がいきなり笑い出した。
何事っ!?
「クククッ…さゆみ。そんなに悩むことないだろ?別に無理にとはしないよ。」
・・・え?
「今しなくたって家帰ってからたっぷりしたらいいんだしさ(笑)」
龍牙・・・
「今はそれより、あの薬の効果がいつ、どんな風に起こるのかもう1度古手川さんに聞いてみないとな。」
すっごく寂しそうな顔してる。
「まぁ死ぬことはないって言ってたから安心はしていいだろうけど…」
私のせいだ。
「でもさ、動物になったり、透明人間になったりとかしたら、ちょっと困るな!」
私の自分勝手の考えで、龍牙を悲しませちゃった。
「…さゆみ?」
「………」
「………気にしなくて大丈夫だよ。」
「え…?」
「クスッ。どうせ恥ずかしくて言えなかったんだろ?さゆみのことはちゃんと分かってる…でもちょっと意地悪してみただけだから。」
「龍牙…」
「まぁそれもあるけど……本心は、さゆみとキスしたいって思ってたんだよな。」
「私…」
「なんかさ、日に日にさゆみと一瞬でも離れるのが嫌になってて、なんていうの?独占欲?…俺、さゆみを縛りつけるような真似はしたくないからさ。だから我慢するときは我慢す「…いいよ。」…るか…ら?……えっ!?」
「別に縛って
いいよ。」
「…さゆみ?」
「…私は龍牙のことが大好きだから。龍牙に何されても平気。周りにおかしいって言われても私は気にしない。キスも、それ以上のこと…も、私は龍牙とだったらしたいって思うし、だから…」
「………」
「我慢、しなくていいん…だ、よ?」
「……っ…」
「りゅ、龍牙…?」
「………のか…?」
「えっ?」
「…本当に、いいの…か…っ?」
「…うん…っ…」
龍牙がゆっくり近付いてくる。
「さゆみ…」
「っ!」
龍牙の右手が私の左頬に触れる。後、数センチで龍牙の唇が私の唇に・・・
「───えっ?」