「───お、お邪魔しま~す…。」
「…おう。先に俺の部屋行っといて。」
「分かった。」
───ガチャ。
うわぁ。新の部屋、久々に入ったな。ちゃんと綺麗に片付けてる・・・私の部屋の方が散らかってるかも。何かショック。
でも綺麗というより・・・生活感が無いというか、ただ物が飾ってる様に感じるのは気のせいかな?
「───さゆみ、麦茶で良かったか?」
新が入って来た。
「うん、ありがとう。」
「………」
「………」
うぅ・・・なんか気まずい。何か話題、話題・・・あ。
「あ、新!」
「何だ?」
「美味しかった♪」
「…は?」
あ、主語を言うの忘れてた!
「お弁当、美味しかった!」
「あ、あぁ…」
「毎日違うおかずだからもう楽しみで堪らないよ♪すごいね、新天才だよ!」
「…別に、大したことじゃねぇよ。好きでやってるだけだし。」
「いやいや!全然大したことだよっ!?私もあんな風に作れたらいいのになぁ。」
「ブフッ(笑)!!」
「……新。」
「ククククククク…(笑)」
「…新、言いたいことがあるなら言えばいいと私は思うよ?」
「ブハッ…ククククク…(笑)」
「新っ!!」
ある程度は察してはいるが、聞かずにはいられず、ちょっと怒り気味で新に聞いた。
嫌な予感しかしない・・・。
「ククク…だってよ、さゆみお前、ククク…ハハハハハハハハハッ…(笑)!!」
「新っ!笑いすぎだよっ!!」
何で新がこんなにも笑っているのかって?
それは・・・私が異常なまでに料理が下手だから。
「ハハハ…ククク……はぁ、笑った笑った(笑)」
「本当にね。」
「わりぃわりぃ(笑)」
「………」
絶対悪いと思ってないな。
「だってよ、お前下手過ぎにも程があるだろ。ハンバーグとか焼き飯とか卵焼きとか火使うものは全部焦げちまうし、サラダは何故か粉々になるし。逆にスゲーと思う時あるよ。」
「うぅ…しょうがないじゃん。美味しく作りたいだけなのに何か張り切り過ぎちゃって失敗しちゃうんだもん。」
「それ、絶対張り切り過ぎが原因だろ。」
「返す言葉もございません………でも…」
「ん?」
「新、私が作ったもの全部食べてたよね。あれ、すごく嬉しかったなぁ♪」
「…っ…!!」
「新?」
「べ、別に美味いから食べてたわけじゃねぇからな!ただ食べ物はちゃんと食べないと農家の人達に申し訳ないから仕方なくマズイお前の飯を食べただけだからなっ!分かったかっ!?」
「う、うん。新の気持ちはよく分かったけど、そこまで酷く言わなくてもいいと私は思うなぁっ!!」
「うるせー!あそこまで酷く作る方が悪いんだよ。」
「うっ…」
それはそうだけど!
そんなに美味しくなかったのかな・・・?
そういえば新、マズイマズイって言いながら食べてたような・・・・・あんな真っ黒いものを食べてた新ってすごく偉いなぁっ(泣)!!
もう弟子にして欲しいよ、新師匠ぉぉぉ!尊敬しておりまするぞー!!
「……言えるかよ。お前の作った飯を誰にも食べられたくなかったからって……」ボソッ。
「え?新、今何か言った?」
心の中で新を尊敬していると、新がボソッと何か言ったのを聞こえた。だけど
「…別に。何も言ってねぇよ。」
ベシッ。
「痛っ!」
新は言ってないと言うと、いきなり頭を叩かれた。
「それぐらいで痛えわけねぇだろ。」
確かに痛くは無かったけど。
「条件反射だよっ!」
「何のだよ。」
クシャ。
「うわっ!」
新は今度は頭を撫でてきた。
久しぶりだなぁ、新に撫でてもらうの。
小学校ぶりかな?・・・落ち着くなぁー。
「…さゆみ。」
「なーに?」
はぁ、気持ちいい♪
「龍牙、とは…どうだ……?」