しかし、彼女から返ってきた言葉は意外なものだった。
「…いや、それは違うと思う。」
「え?」
拍子抜けするあたし。

「だって、逃げる時勝也言ったもん。“ここは俺が倒すけん、優美華は逃げろ”って。」
えっ?でもそれやったらなんであの時…。

「ちょっと詳しく聞かせて?」
「あ…うん。
あの時…一緒におった時、“なんか変な音がする”って勝也が言って、その足音がする方向に見に行かしたと。
廊下の角から見らして、“鬼が来る!”って言わして、動揺しよったら、さっき言ったみたいに“ここは俺が倒すけん、優美華は逃げろ”って言わしてうちば逃がしたと。
うちは勝也やったら倒せるって思ったけん、そのまま逃げたと。
後ろも振り返らんで走りよって、そしたら勝也の悲鳴が聞こえて…。
やけん、うち戻って見に行ったら勝也も鬼もおらんかったと…。
そこは何事も無かったかのように静かで…。」

止まりかけていた涙がまたぽろぽろとれ始めた。