或る、駐車場へ帰った時の事である。
それまで何と無しに決められていた目的地を、小父さんが僕に委ねるように。観光案内の看板の隣で、こう問うたのだ。
「それで、次はどこへ行きたいのだ。」
それはまるで、これまでも僕がそれを決めてきたかのような口ぶりで。
けれどそれに口答えする以前に、それが起こった。

僕の腕は勝手に、僕の意志とは無関係に。ただ僕の無意識のまま昇がり。看板の中の一点を指差したのである。

「林道か。おい、行くぞ。」
小父さんはそういって、場所を確認してから運転席へ乗り込んだ。
それらはとても自然で、何でも無い事のように錯覚させようとする。しかしその内で、ただ僕だけが、僕の心だけが取り残されていて。再び助手席に座り、相変わらずに流れてゆく景色を見ていると、その出来事の違和感が増していった。