これだけの状況で、取り乱すような事態も起こらず。僕は携帯の電源を落とした。
「本当に誘拐されてしまった(笑顔)。」
そんなメールを保存もせずに。運転席とは放れた側のポケットに、財布と一緒にそれを入れて。このぼんやりとした、漠然とした、わけのわからない感覚について思いをはせた。
それはあの時に感じた、悲しみに対する感情とひどく似ていた。払いようの無い眠気にも。
そうして僕は夢を見た。