確か、あの時もこうして、自転車のチェーンが外れていた。

学校に遅刻しそうで急ぐ時、信号待ちから漕ぎ出そうとする時、力を込めすぎては外れる。
僕の自転車のチェーンはよく外れた。
その度に、腰を下ろして急ぐ頭を熱くさせて治していた。

けれど同時にその垂れるチェーンが、そんなに急がなくても良いのだと。自分に遅刻する正当性を与えてくれるようで、慰めていられるような気にもなっても。
それを信じられるだけの自己は持ち合わせておらず。兎角、僕は顔を熱くさせて。そうした作業を終らせていた。

あの日は、登校の途中であった。