武道はやっぱり痛い。
当たり前のことだが…。
打つ側も、打たれる側ももちろん。

………


風花の朝は遅い。それはもう本当に。

だいたいお日様が真上に登った頃目を覚まし出す。
頭を通り過ぎても寝てるときもあるくらいだ。
寝る子は育つとも言うが、育っているのは身長と体重ぐらいであろうか。

.......余計なお世話だ。


『なんかすごく一日を無駄にした気分だな、
とりあえず仕事探しに行くかな…。』

チャチャっと準備を済ますと町の掲示板の前まで自転車を漕ぐ。
前髪とおでこの間には汗がにじんでおり
蝉の音も鳴いていて、本格的に夏が来たようだ。

掲示板の前まで来ると心地の良い声で囁くように話しかけられた。


『あの~もしかして仕事をお探しですか?』

『えっと、まぁそんなところです。』
声をかけられたことに警戒しながらもそれが悟られないようにと言葉を返した。

『もしよければ、私の元で働きませんか?』

よく見るとこの声の主はとても綺麗な顔立ちをしていた。
風花にじっと見られているのを分かっているのに言葉を続けた。

妙に肝が座っているような気がして、落ち着かない。

『別に怪しい仕事とかではないですよ?
しいていうなら、町の安全を守る仕事ですかね、』

それって私がやってる仕事と同じじゃん!
とも思ったがあえてそれは伏せておく。

『時給だと一時間で2000ミール。
どうですか?悪い話ではないと思うんですけど。』


今やっている仕事と同じような内容でしかも安定している!
がっつきそうになるのをこらえて冷静になろうとするが無理だった。

『やりますやります!』

女性がニヤリと笑ったようにみえたがそこまできにしなかった。