「あの…なんで…」
さっきも聞いたような言葉に、返事してなかったな、なんて思う。
「嫌そうに、見えた」
なんとなく自信がなくなって小さい声になったけど、
こんな静かな夜。
多分、聞こえた。
チラッと見えた横顔が笑っているように見えた。
なんだかうれしくなって、椎名さんの手をつかんんで歩いた。
しばらく歩いていると
「あ、ここです」
そう声が聞こえて、視線の先を見る。
そこには綺麗でおしゃれなアパートがあった。
…なんか、あっという間。
「水瀬先輩、送っていただいてありがとうございました!」
ふわっと笑った椎名さんに少しだけ固まった後
「…ん」
それだけ言ってパッと手を離す。

