「本当にありがとう。すごく、感謝してる。気持ち悪いかもしれないけど、でも俺、すごく憧れてたから」



「憧れてたって……もしかして、女装のこと?」



「ち、違うよ! そうじゃなくて、こういう漫画みたいなデート、だよ。俺、男だしさ、少女漫画に憧れてるなんて友達に言ったら、絶対引かれるじゃん? だから、こういうのずっと諦めてたんだ」



少し寂しそうに、彼は笑う。



そうか。彼はずっと、自分の気持ちに戸惑い続けていたのか。



「だから、大町さんに付き合ってもらえて、本当によかった! 大町さんにも引かれるんじゃないかって、本当は内心ビクビクしてたから!」



その言葉を聞いたとき、内心で嬉しく感じたと同時に、何か違和感のようなものを感じた。



その違和感は、私がずっと抱いていた違和感の一つだった。