時は金なり

渚は確かにあの一件以来、今までのような無茶はしていなかった。

自分だけでやろうとはせず、他のみんなの力を借りることを覚えた。

それでも自分は自分らしく仕事をする、あくまで他力本願にならないように。

何よりも渚は自分を傷つけた。

しかし遠回りはしても、最後に自信を持つことができた。

それは時間、そして人の思いやりだけがなせる業かもしれない。

「じゃあ本当に無茶なことはしてないんだな?精神的にも重さや辛さを感じてないんだな?」

隼人も渚がそこまで無茶をしてないことは知ってはいるのだが、ついつい心配してしまうのだった。

渚の目を食い入るように見つめながら尋ねる隼人に、渚はしっかりと隼人の目を見ながら頷いた。

人間、自信のないことや本心を話していないときには相手の目を見て答えることはできない。

この二人のアイコンタクトから、渚が自分の答えに自信を持っていることが伺えた。

隼人はそれを見てやっと表情を緩めた。

渚もその顔を見て、にこやかに微笑んだ。

「じゃあ最近の話、学校で何してるかとか聞かせてくれよ」

そう隼人は言って、渚のほうに改めて向き直った。

その渚の目はエネルギーと自信で満ち溢れ、病院での自分を見失っていたときの渚を思い出させるものはかけらもなかった。

あの悲惨な事件の面影を感じさせる様子もなく、渚は心から隼人との時間を楽しんでいた。