時は金なり

「わかった!言う言う!言うからりんには言わないで!」

どういうわけか、渚のリストカット以来、隼人とりんは徒党を組むことが多くなり、渚が健康面に関してどちらかのいうことを聞かない場合、二重に怒られるようなシステムが出来上がっているのである。

つまりここで渚が本当のことを言わないと、そのことがりんにも伝わって、隼人だけでなく、りんにも怒られることにもなるのだ。

「ごめんなさい。実は明日の会議の準備をしてました…。どうしても今日中にやりたかったから…。でもでも、他の子も巻き込んでやってたからね!?」

懇願するような渚を前に、明らかに落胆の表情を見せる隼人。

「…何時間連続作業だ?」

隼人は少し機嫌が悪そうに聞いた。

「えっと…、3時間かな?」

渚は考えながら言った。

そしてその瞬間、隼人の顔がさらに怒りに燃え、そして徐々に呆れ顔、そして心配顔に変わっていった。

「…お前な~、主治医の言うこと、聞く気あるのか?『無茶なことはするな』『適度な休憩を取ること』って散々言ってきたと思うのは俺だけか?」

「でも全然大丈夫だよ、私。心の苦しさは感じてないから!…もう、そんなに心配しないでよ。大丈夫だからさ」

「大丈夫を連発していて、いつの間にか心の病気にかかってたのはどこの誰だったかな?」

隼人の声はまだ厳しい。

「…私です。でも本当に今は大丈夫だからさ!もうあんなことをしようなんて微塵も思わない。みんなにも先生にも心配させるのはいやだから」