時は金なり

保健室に着くと、渚はドアの前で呼吸を整えて、ドアをノックした。

「どうぞ」

という隼人の声を聞いて、渚はドアをスライドさせた。

机に向かって、隼人が資料を整理しているところだった。

その間も渚は必死に呼吸を整えていた。

ここに来るのに走らなければいけなかった理由を言えば、心配させることをわかっていたからだ。

隼人は渚だとわかると、いすに座るように指示し、まだ少し残っている資料整理を終わらせてから、渚のほうに向き直った。

「お待たせ、渚。調子はどうだ?」

隼人はにこやかに聞きながらも、その目は瞬時に渚の様子を観察していた。

そして渚が口を開く前に、自分から口を開いた。

渚の顔に疲れを読み取ったのである。

「…渚、正直に答えろよ?さっきまで何してた?」

隼人の問いに一瞬詰まる渚。

しかし、元よりうそをつくつもりだった渚なだけに用意は十分だった。

「え、別に何も?先生とのカウンセリングがあるから、学校には残ってたけど、別に何もしてないよ?」

「…本当か~?じゃあなんで微妙に呼吸を乱れてるんだろうな?そして顔に疲れが見えてるぞ?」

隼人の目をごまかすことはできなくて、あせる渚。

一生懸命、言い訳を考える渚だったが、やはり隼人のほうが一枚上手だった。

「ここで言えば見逃そう。ただし言わなければ…」

そういって隼人は渚を問いただす。