時は金なり

「先生、何かあったの?やけにうれしそうだね。何かいい知らせでもあった?」

渚は本をひざの上に下ろしていった。

そして不思議なことに気付いた。

隼人が入ってこないのだ。

ずっと入り口のところで止まっているのだ。

そしてそのまま中に入らず口を開いた。

「その言葉、きっとあとで俺がお返しすることになるよ」

そう言って隼人が中に入ってくると、その後ろには長い行列ができていた。

その列は渚の姿が見えると、一気に列を崩し、渚のベットの回りに集まってきた。

渚のクラスメイトだった。

ほとんどのクラスの子が渚の見舞いのために時間を空けて、一緒に来てくれたのだった。

渚はあまりのことで声が出なかった。

そしてただただ驚くことしかできなかった。

「元気そうじゃん!」

「早く退院して学校に出てきてよ。渚がいないとクラスが寂しいんだよ?」

「これみんなからのお見舞いだよ」

と千羽鶴と果物が差し出される。

渚は何を言えばいいのかわからないまま、ずっと固まっていた。