時は金なり

隼人は一気に話し終えると、渚のほうに向き直った。

しかし渚の顔はいつものように輝いてはいなかった。

そんなことが起こるのか、といぶかっているようだった。

「…そうなんだ…。でも私にはそんな仲間はいないし、どうなるんだろう…」

渚は不安そうに少しうつむいて話した。

「おいおい、これは俺の場合だよ。他にも治す方法なんていろいろあるさ。だから気にすることじゃないよ。前から言ってるだろ?焦る必要はないって。お前はお前のペースで治していけばいいんだよ」

隼人がそう言うと、渚はやっと少し笑って頷いた。

しかし渚は隼人と同じ経験をすることになるとは思っても見なかった…。





二週間後、渚の部屋の面会謝絶の看板は取り外された。

それと同時に渚の手首の包帯も外された。

傷は白く残っていて、渚に過去の記憶を思い出させるには十分なものだった。

隼人は渚にリストバンドをすることを薦めた。

リストバンドをすることのメリットはいろいろあるが、何よりその傷を見ないで済むのは渚にはうれしいことだった。

そして運命の日が訪れた。

その日、渚は普通に朝を迎えていた。

そして昼ごはんを食べ終わるまではいつもどおりの平凡な毎日だった。

そしていつもどおり本を読もうとしているところに隼人が現れた。

顔がいつもよりもニヤニヤしている。

そんな隼人を見て、渚は首をかしげた。