「で、お前は?調子は悪くないか?」

隼人に聞かれて、渚は昨日からずっと隼人のことが気になって自分のことをまったく考えてなかったことに気がついた。

しかし気づくとすぐに、手首の傷がうずいていることに気がついた。

それはまるでもう一度自分の手首を切りたがっているようで、渚はそのことを隼人に正直に言うことはさすがにできなかった。

渚は大丈夫と答えたが、渚の表情と答えるまでの時間の加減で、隼人は何かを敏感に感じ取り、渚に確かめた。

「本当に何もないか?な~んかお前の答え方が気になるんだけど?」

隼人の、すべてを見透かしてるような目が怖くて、渚は正直に言わざるを得なかった。

「…何でわかっちゃうの?…ほんとはね、手首がうずいてる…。なんかもう一度切られたがってる感じ…。ごめんなさい…」

渚はそういうと目を閉じた。

怒られることを予期していたからだ。

しかし隼人は怒りはしなかった。

渚が言い終わった後、左手首を抑えるのを見て、

「その感情は抑えることを薦めるね。仮にもう一度切れば、傷は手首にもっとひどく残るだけでなく、心の傷も広げることになる。そしてリスカに対する依存も激増する。もしそうなれば、リスカなしには心の平静を保てなくなるし、治療はもっと厄介になる」