時は金なり

「いきなり腕に力が入ったから何が起きたのかと思った…。どうしたの？」

渚はまだ心配しながらも隼人にそう尋ねた。

「…ははっ！腕に力が入ってわかったってのはすごいな。人の変化に敏感なお前だからこそ成せる業だよ。…今、お前に俺のリストカットの話をして、ちょっと深く思い出にはまりすぎて、フラッシュバックが起こったんだ。…おっと。だからっておまえのせいじゃないからな」

隼人は渚の性格を見抜いて先読みして、渚の不安を軽減した。

「でも…」と、それでも不安そうな渚。

そんな渚に隼人は力強く言い聞かせた。

「だから気にするなって。いいか？フラッシュバックはいつでも起こりうることなんだ。心の傷は完治したように見えてもいつまた傷口が開くかわからない。瞬間的に傷口が開くのがフラッシュバック。もちろんフラッシュバックしてそこからまた同じことを繰り返してしまう人もいるが、俺は違う。自分の心を落ち着かせる方法を知ってるから。だから気にしなくていい。わかったか？」

隼人は確認するような目で渚を真正面から見つめた。

渚はやっと納得して笑顔で頷いた。