時は金なり

隼人は思い出に浸っていたが、その思い出が事態を急変させた。

隼人はその思い出に深くはまりすぎたらしく、感情も一気にその頃に戻ったのである。

その変化を渚も鋭く感じ取った。

というのも力の入ってなかった隼人の腕に瞬間にして緊張が走ったのである。

そして振り向くと必死に呼吸を整えようとしている隼人の姿があった。

「先生!どうしたの?大丈夫!?」

渚は瞬間的に隼人のひざから飛び降り、隼人の腕を力づけるかのように抱きしめた。

しばらく隼人は渚の言葉に耳を貸せない状態だったが、やがて落ちついて渚の頭を撫でた。

「…悪い、渚。びっくりしたか?」

隼人は落ち着いた声で、優しくゆっくり話しかけた。

渚はそれまでずっと抱きしめていた隼人の腕をやっと放して、ゆっくりと隼人の手をひざの上に戻した。

そして隼人と視線を合わしてゆっくりと頷いた。