時は金なり

「なになに?退院できる?」

ベッドから身を乗り出し、瞳をきらめかせている渚に答えを言うのは多少気兼ねするところはあったが、本当のことを言わないわけにはいかない。

隼人は静かに話し出した。

「ばーか。そんな簡単にお前の心の病気は治らないんだよ!確かにパニックを自分で抑えられるようになったのはたいした進歩だが、実際お前の状況で起こるパニック症状は案外すぐにコントロールできるようになる。それにお前が入院しているのはリストカットによる怪我の様子を見ることと、リストカットをしてしまった原因を取り除くことが目的なんだ。今の状態じゃ心も怪我の様子も安心できないだろ?だから退院はもっと先さ。そんなに慌てる必要はないよ。あせらずにゆっくり治せばいいよ、渚」

そう言って隼人は渚を抱きしめた。

しかし本当のところは隼人も病院で渚を見るのは何か耐え切れないようなものを感じていた。

いつも元気に学校を走り回っている渚をどうしても思い出してしまうのである。

その渚と多少元気になったとはいえ、まだ少し顔色の悪い渚を比較すると、こちらの元気も何となくなくってしまうのである。

だから恋人としての隼人は渚を早く退院させたかった。

しかし医者としての隼人はやはり渚の怪我と心の状態は心配せざるを得ないものだった。

怪我はあと2,3日で回復するはずだが、心のケアは長く時間がかかる。