時は金なり

「そうか…。まあお前は勘も鋭いからそう言われればそうなんだが、大丈夫か?」

まだ心配を続ける隼人に渚はいつもどおりの笑顔を向けた。

その笑顔にやっと少し安心した隼人は自分の仕事を始めた。

渚の心の問題を取り除くこと。

今回、渚を退院させるための絶対必要条件である。

隼人は手にカルテを持って、話し始めた。

「じゃあ診察を始めるか。今回は身体の治療というよりは心の治療だ。お前が自分の手首を切るにいたった理由を見つけることが大切になる。ではまず最初に自分で思い当たる節はあるか?何でこんな行動を起こしたか、何でもいいから挙げられるか?」

渚はベッドに座りながら、答えだした。

「…何かカッターナイフを見てたら急に切りたい衝動に駆られたの…。今までに何度か見たことのあるリストカットの番組がいきなり頭に思い浮かんで…。痛くないってみんな言ってたから、試してみたくなった…から」

渚の声は言葉を発するたびにだんだん暗くなっていった。

まるで隼人に怒られることを怖がってるかのようだった。

言い終わった後、おずおずと顔を上げて、隼人の顔色を伺おうとした。