時は金なり

しかしその一方でちゃんと医者としての役目も忘れていなかった。

話しながら渚に異常がないかを注意深く探っていた。

そして話をところどころで区切ってはチェックしていた。

「渚、ちょっと胸の音、聞かせてくれ」

そう言って聴診器を用意し、渚の心音、呼吸音、消化器官の異常、などを簡単に調べていた。

そしてすぐに胸から聴診器をはずし、

「…よし、別に異常はないみたいだな。身体で痛いとことかおかしなとこはあるか?」

隼人は聴診器を耳からはずしながらやさしく聞いた。

渚は少し迷ってから

「…別にないけど、…あの、左手が、指がしびれて動かないんだけど…」とおずおずと答えた。

隼人はその傷のほうを少し見ると、多少きつい表情になり、渚の手を握っていた自分の手を渚の左手首に移動させた。

そしてきつく巻いてある包帯の上からぎゅっと渚の手首を締め付けた。