時は金なり

「…先…生…?」

渚はぼんやりしたような声で、しかしはっきりと隼人に話しかけた。

隼人は口もきけないほどの感動を覚え、ただただ渚を抱きしめるだけだった。

隼人の目には涙が浮かんでいた。

渚には何がなんだか分からない状態で隼人とは反対に困惑の表情が広がっていた。

しばらくそのままの形で抱き合っていた二人だったが、やがて隼人は渚をベッドに寝かし、自分もいすに座りなおした。

渚は隼人の目が真っ赤になっていることにそのときになってやっと気づいた。

そしてさっきよりもはっきりした声で、話し出した。

「先生、目、真っ赤だよ?何かあったの?」

渚はいい気なもんである。

自分のせいで隼人が泣いていたなどとは夢にも思っていないのだった。

「…あのな~、一体誰のせいだと思ってんだ?お前が泣かせたんだよ!」

隼人はそんな渚の言葉に無性に腹を立てながらも、今渚と話していることをうれしく思った。