時は金なり

隼人はしばらく渚を揺さぶり続けた。

おそらく隼人には一生のようにも感じられる時間だっただろう。

しかし実際の時間は5分ぐらいだった。

5分後、隼人は夢から覚めたような様子で、すぐに状況を把握した。

側に落ちているカッターナイフで左手首を切り、結果チアノーゼを起こしていること。

とりあえずそれが分かれば十分だった。

隼人はひとまず渚を置いて、電話をかけた。

もちろん電話先は隼人の父が院長を勤める病院である。

「院長先生はおられますか?」

開口一番この口調だったにもかかわらず、相手が応答してくれたのは相手も驚いたからだろう。

また隼人の慌て方も想像できる。

まもなく父、信吾の声が聞こえてきた。

「もしもし、お電話代わりました。院長の…」

信吾は最後まで言うつもりだったのだが、隼人がそうはさせなかった。

信吾が電話に出て話し始めるや否や叫んだ。