その瞬間、目の前に生徒が一人飛び出してきた。

そしてその生徒もちょうど職員室に入ろうとしていたらしく、見事に隼人にぶつかってしまった。

二人とも驚いたものの、共にこけることもなく何とか体勢を立て直した。

「大丈夫か?悪かったな。怪我しなかったか?」

と心配そうに聞く隼人に顔を上げてその生徒は答えた。

顔は廊下が暗いせいでよく分からない。

「はい、大丈夫です。こっちこそ慌ててしまってぶつかってしまいました。先生こそ怪我はありませんか?」

そう言って二人は目線を合わせた。その瞬間隼人は声を上げた。

「渚!!」

それに反応して渚も顔を上げて、目を見張った。

「先生!全然気づかなかった。何してるんですか?」

と渚は不思議そうな顔を見せた。隼人はすばやくドアを閉めて息をついた。

「ばか、それは俺のセリフだ!生徒がこんな遅くまで何やってんだよ!?しかも体育の授業中に倒れたやつが遅くまで学校で作業するか?」

その言葉を聞いて、渚はしまったと思い、一瞬顔を伏せたが、すぐに顔を上げてにこやかに対応した。