一緒に下校する事になった林檎と蜜。
しかし、蜜が切り出した話題に、林檎は…。



第2話-幼心と恋心-



結局、一つの傘に二人と言う所謂『相合い傘』をして帰る事になった林檎と蜜。

傘は蜜が持つ代わりに、蜜の鞄は林檎が濡れない様に右手側(二人の間)に持って歩いていた。

高校までは徒歩でゆっくり歩いて約15分程度。
それ程遠い距離ではない。

しかし、この雨の中歩くのはお互い欝陶しいモノなので他愛もない会話にすら、つい花が咲いてしまう。



家までの距離が後、半分程の所で蜜が口を開いた。

「…あのさ、林檎?」

先程までの明るい口調とは変わり、真面目な声の蜜に小首を傾げながら林檎は返事をした。

「蜜くん?どうしたの?」

足を止め、林檎の目を見て蜜は話を始めた。



林檎にとって、1番聞きたくない話を・・・。

林檎の大きな瞳に見つめられ、言うか言うまいか迷いつつも、意を決して蜜は切り出した。

「俺、好きな人がいるんだ」

それまで無邪気に蜜を見ていた林檎の目が、ショックで見開かれた。

「う、うそ・・・?」

何とか声が震えるのを抑えようと試みるも失敗に終わる。

「嘘じゃない」

「誰?何組!?」

「それは・・・言えない」

降りしきる雨の中、押し問答が繰り広げられるも意味をなさかった。

-…ずっと、一緒にいてくれる・・・。恋人じゃなくても傍にいてくれるものと、信じて疑って無かった。

蜜くんに好きな人がいる・・・。
その事実を突き付けられた事で、林檎の目の前は一気に真っ暗になった。


「・・・林檎、大丈夫か・・・?」

心配そうな蜜の声に現実へ戻ると、自分が泣いている事に気が付いた。


大丈夫なんかじゃない。
しかし、蜜にこれ以上無様な姿を見られたくない。

「み・・・くん・・・。ゴメン・・・!」

そう思ったら林檎はいてもたってもいられず、無言のまま走り出していた。

背中からは、自分を呼ぶ声が聞こえた。
それでも、振り返る事は出来なかった。