手からバッタの感覚がなくなった。 不思議に思ってギュッと瞑っていた目をそっと開けると―― 「大丈夫。 バッタあっちの方に投げちゃったから。 もういねぇよ! って…泣いてんじゃん! そんな怖かったのかぁ?」 山下先輩がそう言って笑いながら私の頭をよしよししてくれていた。 「前のちっちゃい子だよな? よく俺のクラスに来て春と喋ってる… 虫怖いとか、女の子って感じだな!」 そう言っていたずらっぽく笑った。