なんとか出席を終え、自己紹介を始める。
「みんなにも後でしてもらうんだけど
まずはおれから〜」
興味津々、目をきらきらとさせて、注目された。
「東京出身で、去年この学校に来ました〜
犬と抹茶とスポーツが好きでバスケ部の顧問してます
バスケ部入ってね!」
生徒たちは、簡潔な自己紹介も、にこにこ、と笑顔で聞いてくれていた。
質問ある?そう聞こうとした時だった。
一番後ろに座っていたいかにも活発そうな男子が勢いよく立ち上がった。
「先生、彼女いる?」
どうして、学生はこの質問が好きなんだろう
そう思いつつも答えるほか無い。
「いない、と思う?」
ちょっと怪しげににやり、と笑って問い掛ける。
まあ実際恋愛は大学の時に2年付き合った彼女と別れてからは、全くない。
でもそんな意味のありげな含み笑いのせいか生徒たちからさまざまな声が飛ぶ。
「絶対いるよ〜」「あの怪しげな感じはもうねえ…」
去年もこんな調子でずっと彼女がいると思われていた。
まあでもその方が先生、という立場上は便利だったりする。
生徒に恋愛感情を持たれない、だから生徒を傷つける必要も無い。
と、まあこんなことばかりしてる程余裕があるわけでも無い。
