捜査中、興奮したり牽制したりする時に荒くはなってしまうのは致し方無い。


それでも、一人称は完璧だったはずだが。



「(俺、と言ってた気がする…)」



久しぶりに椒鰲と会話したせいで、戻っていたのか記憶の隅っこでそんな気がした。



そして今、棟郷と話している時はどうだったのか。


実際はちゃんと言えていたのだが、威叉奈にとっては自然過ぎて思い出せない。



「まぁ、仕事中は丁寧に越したことはないが、俺といる時ぐらいは構わん。」



「棟郷さん…」


「賭狗膳の前じゃないなら問題ないだろ?」



棟郷は、賭狗膳を気にしているらしい。



「…棟郷さん、もしかして、トクさんにヤキモチ妬いてます?」


「は、はぁ?何で俺が!そんな訳ないだろ。」



「そうですか?やたらトクさんの名前が出てきたから、そうかと思ったんですけど。」



違うならすいません。



なんて、あっけらかんと威叉奈言う。


しかし、当の棟郷は。


何故そこに気が付くのに、その他については気付かないのか。



やっぱり振り回されているのは自分だと、棟郷は嫉妬を全力で否定しながら思うのだった。