ドンッ



「ぃ゛っ――……」



椒鰲の手からナイフが飛び、地面に刺さった。



「こんっの、ガキ!ちょーしこいてんじゃないよっ!」



「早乙女!それぐらいにしておけ。関節が………」



「トクさん……、アオちゃん……」



振り翳した腕を蹴り上げ、椒鰲に見事な関節技を決めているのは怒り心頭の早乙女だった。



痛そうだな、などと他人事に思いながらも自業自得だと、止める賭狗膳はあまり可哀想には思わない。



「威叉奈っ!良かった、怪我は?……血まみれじゃねーか!」


「手、だけだ。つか、俺より……管理官が……」



「あ?棟郷…!…お前……」



威叉奈につられ賭狗膳が目線を向けると、木に体を預け、左手で頭を押さえながら肩で息をする棟郷がいた。



「問題ない。吹蜂の方が酷い…だ、ろ……」



「管理官!」


「ちっ。管理職が無茶しやがって。」



力なく座り込んだ棟郷は、それから動かなくなった。



「管理官!…管理官!…………棟郷さんっ!」



威叉奈は忘れかけていた睡眠薬で意識が途切れるまで、賭狗膳が止めるのも聞かず棟郷の名を叫び続けていた。