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「それから茉莉はずっと笑顔でいるの。
〝あたしの取り柄は笑顔だけ〟って
辛くても苦しくても笑ってるの。
あの日から泣き顔は見てないわ。
でも、きっといつも泣いてる。
あたしが知らないところで....」





「ーーー.......」



夏芽から聞かされたその過去は
輝にはとても衝撃的で
言葉を口にすることが出来なかった。












輝は何を思っていたのだろう。
唇をギュッと噛んで
とても辛そうな表情を浮かべた。



「....ごめんなさい、
こんな話だとは思わなかったよね」




「......いや、いい。
知れてよかったよ。
思い返せば茉莉はたまに、
ほんの一瞬だけ、
真剣な瞳や辛そうな顔をしていた時があったんだ。
その時は気のせいだとしか
思っていなかった。
俺、あいつに酷い言葉を言って
たくさん傷つけていたんだな....」



「輝....」


「ありがとう夏芽。」


「ううん。これが茉莉の弱さで
一番のトラウマでもあり
美しい過去でもある。
拓真が亡くなって
もう3年が経とうとしてるけど
吹っ切れてなんかいないのよ。
だから、もう少し優しくしてあげて」



「......ああ。悪かった。」




気がつけばもう夜の8時を回っていた。

ふたりはカフェを後にする。