あの一月の震災で母さんみたいに、命を落とした人が沢山居る。

そんな中で、生き残ることが出来た僕だけど……、
僕はその命を終わらせたいと、望み続ける。



湧き上がる罪悪感みたいなものを吐き出しながら、
そのまま今度は、あの人が教えてくれた区画番号を頼りに一つずつ
母さんの名前が刻まれてある、冷たい石を探し続ける。



一つ、また一つと真新しいお墓を見つけては、横を覗き込んでいく。



やがて……ようやく見つけたその場所で、
倒れ込むように、母さんの墓石に手を触れた。



母さんの名前・亡くなった日・建立日・建立者などの
名前が記された側面。


その中に建立者の名前に、
僕自身の名前が刻まれているのに気が付いた。



そしてお墓の隣には『愛』と彫られた石が飾られている。
そこにはあの人と僕の名前が建立者として刻み込まれていた。


初めて手を合わせた、母さんのお墓。

あの日から一度たりとも、
来ることが出来なかったその場所に座り込む。


その突如、再び大地がグラグラと揺れた。



余震。



頭の中ではそう理解しているはずなのに、
心は追いつかなくて、
いとも簡単に、あの日の時間へと僕を縛って行く。






そんな不安から逃げ出したくて、
今の現状から逃げ出したくて、
僕はタブレットケースの中に入った全ての薬を
ミネラルウォーターで一気に流し込んだ。







何か薄く幕が張られているかのように
すっきりしない感覚が僕を支配し、
体全体を例えようのない倦怠感が包み込む。


今も消えない生々しい故郷の傷痕が
僕の体を恐怖感に追い込んでいく。

永遠にリフレインされ続ける
記憶と時間。


途切れることのない
絶望感と悲壮感が僕を襲い、


僕の存在そのものの意味が
見出せなくなっていく。





僕は僕に関わる全ての大切な人を失っていくんだ。