瞳矢たちと共に、会場へと向かった僕は、
無意識のうちに、真人の姿を探し続けていた。


天李先輩の診察が終わった後、
瞳矢と別行動になった僕は、
会場内の観客席の方へと入った。






真人……本当に君は今、
何処にいるんだ……。






昨夜、真人を探し回る車内で
瞳矢に伝えた昔話。



瞳矢にとって、真人の存在が親友のように
僕に取っては、弟みたいな存在だったということ。


そして今、真人がお世話になってる多久馬家に
僕自身も身を寄せていた時間があったと言うこと。




恭也小父さんは、本当に真人のことを思っているし、
真人のお母さんである、神楽姉ちゃんのことが大好きだけど
昭乃夫人と、その息子は別だったってこと。


ずっと目の敵にしているような、昭乃夫人のこと。


それと同時に、
家庭内暴力を受けているのかもしれない推測を伝える。



僕自身も、多久馬家の暮らしに限界を感じ始めていた時に
和羽と出逢って、この檜野家の元に「結婚」と言う形で引っ越しして
新生活を始めたから。


だから……もし叶うのならば、
この家で、真人も呼んで一緒に住めたらいいかもと思うまでになっていた。

そんな僕の想いを告げると、
瞳矢は凄く嬉しそうに微笑んでくれた。


僕の一存ではどうにも出来ないことは知ってる。

だけど……、今日、真人がこの場所に来てくれたら
新しい生活への最初の一歩が踏み出せるかもしれない。



瞳矢の病気のことも、真人に告げて恭也小父さんに告げて、
それをきっかけに、真人を檜野家に招くことが出来たら。


そしたら病気で希望を失いそうな
瞳矢の未来に灯りをともして貰えたら、
どんなにも嬉しいだろうって。


先に話した僕の想いには和羽は賛成してくれた。





ホールの中をゆっくりと見渡すように、
僕は会場内を歩いていく。

開場時間が始まり、
灯りがゆっくりと消される頃、
僕は真人の姿を捉えた。


自分の座席に向かう途中、
向かう先とは逆側の壁際に立つ真人。


席を立って慌てて、追いかけようと思ったものの
すぐに見失ってしまった。



ピアノの演奏は次々と進んでいく。




そして瞳矢の時間。






僕は祈るような気持ちで瞳矢のこの大切な時間が
無事に終わるようにと祈りながら……見守っていた。



……課題曲……。



瞳矢の手は途中でしまってしまった。




座席をたって……瞳矢が
会場内を見渡す。





瞳矢も真人を探してるんだね。




大丈夫。



真人はちゃんと来てくれてるよ。