「ねぇ、パパ。
 コンクールの課題曲、練習見てくれる?」


そうやって切り出すと、

「なら穂乃香の練習の後に、
 パパのリサイタル用の練習も付き合って貰えるかな」

っとパパは言葉を返した。






その夜、私はパパと二人、
夜遅くまで自宅のピアノを奏で続けた。




翌日、私たちの地区大会本選が行われる
トバジオスホールで、パパのリサイタルが行われた。


リサイタルで演奏するのは、パパと咲夜のお母さん。


そしてトバジオスホールの経営者である
華京院グループの御令嬢が率いるDTVT楽団の
ピアニストでもある、惣領国臣。


最後の一人は、
すでにコンクール本選出場の切符を持つ咲夜。





私たちがリサイタルで、ピアノの音色に満たされている時も、
私の知らないところで瞳矢が苦しみ続けていたなんて、
この時の私にはまったくわからなかった。