「答えろよ。瞳矢!!!」

「…………」

「あいつなのか?
 アイツが入学してから、おまえの様子がおかしくなった」


……違う……。
その前からずっと様子がおかしかった。


「真人のせいじゃない」

辛うじて声にすることが出来た言葉。


「もういい!
 聞きたくねぇよ。
 瞳矢、明後日のコンクール本選は来るんだろ」

飛島の声にボクは頷いた。


「本選……俺と瞳矢の勝負になりそうだな。
 お互い、良い演奏をしような」

「そうだね。
 悔いのない演奏にしようね」


ボクは微笑みと共にその言葉を告げる。

それはボク自身に言い聞かせるための言葉。
それは浩樹の為に発する言葉。


そして未来に繋げる一筋の希望。




大丈夫。
ボクは、ゆっくりと自分の現実と向き合っていくから。


だから今は……
最後の夢を見させて。


コンクール本選で無事に演奏が出来るように。


それがピアニストを夢見るボクの最後の願い。