入学式の翌日からボクは学校を休んで、
母さんと病院通いを繰り返していた。


義兄さんが知ってる先生と相談して、
紹介してくれたのは、神前悧羅大学の付属西園寺病院。

義兄さんの指導医をしている先生の、
知人だと紹介された。


西園寺天李【さいおんじ てんり】先生。


その先生の指示の元、
毎日、病院については指定された検査を受ける
そんな不安の渦に飲み込まれそうな時間。



学校は勿論、ピアノ教室にも習いに行けず、
友人である、飛鳥からの電話が着信を告げているのを知りながら
電話に出ることすらしていなかった。


指先に感じた違和感。
ボクが感じる漠然とした不安。


それは誰かに話すことによって、
より現実になってしまうかも知れないと怯えるボク自身の弱い心。




そんな病院通いを初めて、一週間ほどが過ぎた
帰り道、母さんが運転する車の前に雨の中、飛び出してきたのは真人。


慌てて母さんは、真人を避けて車を停車させると
ボクは真人の元に、すぐに飛び出していた。


何とか母さんの車の中へと、真人を誘導したものの
車内に連れ込んだ真人は、よほど長い間、雨に打たれすぎたのか
高熱を発しているみたいだった。


多久馬総合病院。


今の真人の家族はお医者様。

多久馬総合病院に院長に連絡をしようかと、
真人に切りだすものの、
真人はそれを拒絶したまま意識を失った。


真人の意思を尊重した物の、
他の病院にも連れて行けない。



ボクは真人を自分の体に持たれかけさせたまま、
義兄さんと連絡を取ろうと、
携帯電話を取り出して番号を表示した。



数回コールがなって、義兄はすぐに出る。




「もしもし義兄さん」

「瞳矢どうしたの?
 そんなに慌てて」

「病院抜けられる?
 真人が高熱で倒れちゃって、今母さんの車の中なんだけど
 真人が、多久馬の家に帰るのを嫌がるんだ。

 だけど多久馬の養子になってることは、
 この周辺じゃ、噂になってる。

 真人があずかりしらぬところで、噂は尾ひれをつけて広がってるよね。
 だから真人を他の個人病院にも連れて行けない。

 すぐに多久馬院長の元に連絡が言ってしまうから、
 だけど真人が苦しんでて」



ボクは思いついたことを必死に訴える。


ボク自身も指のことで不安だけど、
真人も、何も言わなくても不安でいっぱいなんだと言うことは
察することは出来るから。


だからボクに出来ることは、
真人を幼馴染の親友として彼の不安から守ってあげること。


「わかった。

 もう仕事あがりだろうから、
 大夢【ひろむ】先生捕まえて帰る。

 とりあえず瞳矢は、真人の君の体を冷やして」

「うん。
 おでこじゃなくて、大きな血管のところでしょう。

 昔、義兄さんがやってくれたみたいに」

「うん。
 家の近くまでついたら、また連絡入れるよ」



義兄さんとの電話を切った後は、
水筒に入っていたお水でタオルを濡らして
真人の首筋にタオルを押し当てる。