そんなことになったことはないけど、
だけど信じていた筋・核がなくなってしまうのだから
不安だらけに違いないと想像できるわけで。



「焦りすぎたんじゃない?

 真人の気持ちを考えずに、自分を押し付けて
 守った気になって。

 あのさ……」




そこまで言いかけた時、ノック音が聞こえて
白衣を着た先生が顔を出す。



ドクターの登場に、俺と母さんは少し病室の外に出て
縛らく過ごしていると、さっきまで真人の幼馴染と一緒に居た
男の人が病室の前まで戻ってきた。



「今、ここの先生が来てる」

そう話しかけると、その男の人は「有難う」っと小さく答えた。


「貴方、お名前は?
 間違えてなかったら、何度か多久馬総合病院でお会いしてないかしら?」

その人に向かって、母さんが声をかける。

「えぇ、院内でお会いしていると思います。
 素敵なピアノ演奏を時折してくださって有難うございます。

 病院のエントランスに置かれている、寄贈ピアノ有難うございます。

 私は西宮寺冬生。
 真人君とは、彼が最初に入院していた頃に出逢ってます。
 私の両親が、恭也小父さんと一緒に真人君の心臓の手術をしています」

「まぁまぁ、勇生【ゆうき】さんと美雪【みゆき】さんで良かったかしら?」

「はい」

「こんなところで、あのお二人の御子息に会えるなんてね。
 姉さんと和解した後に、小さい頃の貴方の話も聞いているわ」



そう言いながら、母さんは俺の紹介を冬生さんにした。


中から扉が開けられて、ドクターが病室を後にすると
再び、俺たちは病室の中に入る。