「母さん。
 藤本【とうもと】のお墓は何処にあるの?」

「藤本のお墓?
 丘の上にあるわよ。

 だけど神楽は藤本の家と相性が悪かったからどうかしら?」



そう言って母さんは考え込むように黙ってしまう。



「行ってみないとわかんないよ。
 藤本の家と仲が悪いっていっても、伯母さんはこの街に帰って来てたんだ」

「そうね。
 咲夜の言うとおりね。
 藤本のお墓まで案内するわ」


母さんがそう言うと、井村さんが言葉を返す。


「丘の上にある、海の見える霊園のことですか?」

「えぇ。
 わかるかしら?」

「あの場所なら何度かお連れしたことがあります。
 藤本様のお墓と、神楽さんの母方のご両親のお墓を移設されています」



そう言うと、井村さんは方向指示器を動かして
目的の場所へと再び車を走らせた。



太陽が沈んでいくのを感じながら、
ようやく到着した目的地には、赤色灯が光る。



「母さん、あれ救急車」



車が止まったと同時に飛び出すと、
ストレッチャーに乗せられて運ばれる真人を確認する。


だけど真人の様子はおかしい。




「紫音先生。
 真人は?」


「咲夜、冴香さん。
 私たちはこの車で、救急車の後を追いかけましょう。

 彼の傍には、彼の父親であるドクターがいる。
 私が行っても、出来る処置はありませんから」


真人の傍に駆け出したいのを我慢して、
俺たちは再び車に乗り込むと、サイレンを鳴らしながら走って行く
救急車の後ろを井村さんの運転でついていった。




総合病院に運び込まれた真人は、
そのまま救急処置室へと運び込まれていく。


真人を処置室へと見送って、
受付の手続きを終えた、恭也さんの傍に行くと
俺は無言のまま、頬を殴る。





「咲夜っ!!

 恭也君に何してるの?
 あらあら、恭也君ごめんなさい。
 咲夜が……」



母さんが慌てて、恭也さんの方に駆け寄るのを知りながら
俺は今も憤りが収まらない苛立ちを必死に抑え込もうと
処置室の前から離れて、真っ暗な待合室の方へと歩いていく。


苛立ちのままに、ソファーを殴って
その場に座り込む。





真人が救急車で運ばれた。


何が起きたかわからないが、
震災の後、再会した真人は……俺が知る真人とは違ってた。