真人を探してヘリで降り立ったH市。

H市のヘリポートに到着した俺と母さんと紫音先生の三人は
そこから別行動を始める。


紫音先生が何処かに連絡をしていた為、
何処かの会社のスタッフさんが、
ヘリポートまで迎えに来てくれていて、
俺たちはその車に乗り込んで、市街地へと移動した。


あの震災の後も、無事に崩壊することもヒビが入ることもなく
建っているビルの地下駐車場に車を停車すると、
エレベーターで最上階まで案内される。



「失礼します。
 伊集院さま、羽村さまをお連れしました」



ここまで案内してくれた男性が、ノックをして告げると
中から「どうぞ」と声が聞こえた。


促されるままに、開かれたドアから室内へと立ち入る。

伊舎堂の文字が確認できる車内。



「突然、申し訳ありません」

「いえっ。
 紫音さまの仰せとあらば、何なりとご協力させて頂きます」



そう言って、
その部屋の住人は丁寧にお辞儀をした。

そのお辞儀の方法は、ここに来てから何度か見かける
胸の前に手をあてて、膝を折る神前悧羅【こうさきりら】スタイルのお辞儀。


「桜塚君、今は私がお世話になっている状況です。
 桜塚君は、こちらの伊舎堂の関西支社を預かる身」

「本社より、関西支社を預からせて頂いていますが、
 それもこれも、紫音さまのご指導があればこそ。

 学院時代のデューティーは、今も私にとってデューティー以外の何ものでもありません。 

 本家の奥様である恋華さまより、ご連絡は頂いております。
 結城神楽さんの御子息、真人君の行方をお探しとか」

「えぇ。
 こちらには、政成【まさなり】の奥方から連絡が入っていたのですね」

「はいっ。
 恋華【このは】さまの兄であられる鷹宮雄矢【たかみやゆうや】さんは、
 真人君の父親の親友と言う立場です。

 それ故に、関西支社ではこれまでにも結城神楽親子には、
 いろいろと援助をしています」


ここの会社が、知らない間に
真人たちの生活を援助していたという事実。



「姉と甥っ子がこれまでにも、お世話になっていたようで
 ありがとうございます」


話が切れたタイミングで、母さんがお礼を述べると
すぐに本題を話し始めた。



「こちらが、震災前の写真と地図。
 こちらが、震災後の写真と地図になります。

 倒壊した家屋や、すでに瓦礫を撤去した土地もありますので
 こちらの資料を手掛かりに、市街地を探していただければと思います。

 尚、こちらの地図の右上段部の丸で囲んだエリアにつきましては、
 先ほど当社のものが探しにまいりましたが、真人君は見つかりませんでした。

 真人君にしても、神楽さんにしてもうちの社では人気なんですよ。
 時折、素敵なピアノの演奏を聴かせてくれて、
 ファンも多いんですよ」


っと桜塚さんは、二人のことを熱く語りはじめる。




この場所で、神楽伯母さんも、真人も愛されていたことが
凄く伝わってくる。



「桜塚君。
 貴重な情報に感謝します。 

 さっ、冴香さん、咲夜参りましょうか」


紫音様の声に俺たちは扉の方へと歩いていく。



「紫音さま、先ほどの井村を玄関に待機させています。
 そのまま真人君探しに、車を出します。
 ご利用ください」


桜塚さんはそう言って、丁寧にお辞儀をして俺たちを見送る。


井村さんの運転する車が玄関に横付けされていて、
俺たちはその車に乗り込むと、
そのまま地図や、井村さんの情報を手掛かりに真人と神楽伯母さんが
この街でよく言っていた場所へと車を走らせる。



海浜公園。
緑地公園。

神楽伯母さんが働いていた、
伊舎堂グループ傘下のスーパー。

スーパー近くの商店街・ショッピングモール。

真人が通っていた幼稚園・小学校・中学校。




真人にとっての思い出のスポットを
探し回るものの、真人の形跡を辿ることは出来ない。






真人が住んでいた家の方は、
恭也さんたちが向かってる。



そうなると……神楽伯母さんが眠ってる場所しか考えられない。