「この場所、真人のお祖母ちゃんが眠ってるところだよね。
 ここに神楽小母さんも眠ってるんですか?」



瞳矢が恭也小父さんの傍に駆け寄って問いかけると、
小父さんは小さく頷いた。




「瞳矢、俺先に走って見てくる」

「ボクも行くよ」




飛鳥君と瞳矢が先に霊園の中を駆けだす。




「冬生」



そう力なく僕の名を告げた恭也小父さんは、
凄く疲れているように思えた。



「真人は絶対に見つけ出します。
 ここに神楽姉ちゃんが眠ってるんですよね。

 だったら真人のことは、神楽姉ちゃんが守ってくれてる。
 僕はそんな風に思います。

 医者を目指してる僕が、言う言葉じゃないかもしれないけど。
 僕も弟たちの後、追いかけてきます」



そう言うと、少しスピードをあげて二人の後を追う様に
走りはじめる。



すると「兄さん。あそこっ!!」っと、瞳矢が僕を呼ぶ声が聞こえた。




慌ててその場所に駆け寄ると、
新しい墓石の前で、ぐったりと倒れている真人を確認する。



少し様子がおかしい。



慌てて駆け寄るものの、薬を過剰摂取してしまったのか
すでに昏睡状態に陥ってるみたいだった。




「瞳矢、院長呼んできて」

「義兄さん、何があったの?」

「瞳矢、早く。院長を」





慌てながら恭也小父さんの到着を待つと、
すぐに小父さんは真人の状況を把握していく。



「バカやろー」っと珍しく感情剥き出しにして地面を拳で叩いた
小父さんは、そのまま真人の処置を始める。


っと言っても、この場所で胃洗浄などの処置が出来るはずもない。



小父さんは真人の体を抱え起こすと、ペットボトルを取り出して水を飲ませながら、
指を突っ込んで、胃の中のものを吐き出させながら、吐しゃ物が気管につまらないように
気道を確保させていく。


そんな状況下、救急隊員からの電話を預かった僕は
今の現状を的確に伝えていった。

程なくして救急車が到着すると、真人はストレッチャーに乗せられて
救急車の中へと運ばれていく。




「冬生、後で搬送先を連絡する。

 知人の……此処に居た時の真人の主治医に受け入れて貰えるように
 交渉する。

 今は少しでも早い処置がいい」



それだけを告げて、院長が乗り込んだ救急車はサイレンを鳴らしながら
夜の街を移動していく。


赤色灯が遠ざかっていく中、
僕たちは予約したタクシーが到着するのを待ち続けた。



後から車で駆けつけた、真人の従兄弟だと名乗った存在と
伊集院紫音さんは、神楽姉ちゃんの妹さんを乗せて先に救急車の後を追いかける。



暫くして恭也小父さんから受け入れ先の連絡が入ると、
僕は、瞳矢と瞳矢のこの土地の友達にも連絡する。



此処に居る誰もが、真人の現状に驚いているみたいだった。